栃木県日光市に流れる利根川水系の湯西川。
その周辺には、湯西川温泉という
温泉街が広がっています。
ここは平家の落人が姿を隠した地として知られ、
いまも当時の面影が残り、
静かな時間が流れています。
東京からほど近い栃木にあった歴史の舞台、
さっそく訪れてみませんか。
平家の落人が
安住の地にした秘境とは
かつて源平の戦いに敗れた平氏が追っ手を逃れて、全国各地の山深いところに隠れ住んだとされる平家の落人伝説。栃木県日光市に残る伝説は、平清盛の孫である忠房(隠れ名は忠実)が主人公です。
1185年の壇ノ浦の戦い後に、忠房は家臣と共に宇都宮朝綱のもとを訪ねましたが、追討令が厳しくなりさらに移動、鶏頂山(日光市)で身を隠していました。ところが、一族の婦人が男の子を出産したことを喜び、端午の節句に鯉のぼりを立てたところ、源氏の目に触れ大敗。
そして、またもや忠房は逃げ、福島寄りの山奥を流れる湯西川にたどり着いたと言われています。
湯西川温泉もまた
平家の歴史の1ページ
こんなエピソードも残っています。雪の降るある日、忠房は狩りに出かけました。すると、その途中に雪が積もっていない場所を発見。手を入れたら温かく、温泉だということがわかりました。温泉の出るところなら、子孫の誰かは掘り起こすだろうと、その付近に馬の乗り鞍や金銀財宝を埋めたそうです。
やがて時が経ち、忠房から11代目の伴対島守忠光(伴は平家と悟られないための苗字)が温泉を発見し、先祖の忠房が埋めた宝も見つけました。これが湯西川温泉の始まりです。
茅葺き屋根集落で
当時の暮らしを知る
湯西川地区には、平家の落人の暮らしを知る茅葺き屋根集落があります。壇ノ浦の戦いから800年が経った1985年(昭和60年)に集落を再現した民俗村・平家の里です。
家屋の中には、平家物語の復刻版や鎧・鞍・弓などの武具、民具など平家の落人伝説を裏づける貴重な展示が。近くには平家集落や平家落人民俗史料館、平家ゆかりの温泉宿なども点在していて、温泉街を歩くだけで歴史の世界を堪能できます。
風の音や鳥の声、川のせせらぎが穏やかに聞こえる山深い秘境、一度旅してみたいですね。
日本夜景遺産認定のかまくら祭
湯西川地区の冬の風物詩、それは30年以上前から開催されているかまくら祭です。日本夜景遺産、関東三大夜灯(よあかり)、栃木七灯に選ばれていることから大勢の観光客で賑わいます。中に蝋燭を灯したミニかまくらがずらっと並ぶ風景は幻想的でロマンチック。平家の里の茅葺き屋根集落には大きなかまくらが並びまるで昔話の世界に潜り込んだかのようです。毎年1月下旬から3月上旬まで(降雪量により一部内容変更あり)。